「アルテリ」二号

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熊本の橙書店店主田尻久子さん編集の文芸誌(!)「アルテリ」第二号
10冊購入してきました。

表紙は黒田征太郎さん。
執筆陣は石牟礼道子さん、伊藤弘美さん、
坂口恭平さん、平松洋子さんなどなど。

今年の4月のはじめに1号を手にして、
その内容の確かさに深く共感した雑誌です。

その直後、熊本は震災に遭います。

そうして今回発行された第二号は、
書き手の意志を尊重し編集されるも、
自然と「地震特集」であることも内包した一冊になっている。

これは編集の責任を負う田尻さんの言葉です。

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震災の混乱の中、
橙書店とカフェorangeの移転にも取り組む中での編集作業は、
「大変」なんて言葉を簡単に使って語ってはいけない重みがあります。

でも、だからこそ、本誌に綴られた田尻さんご自身が語る「震災」は
ひとりの確かなサイズを感じさせるものであり、
重きを語るも、自由の翼は軽やかに羽ばたき、軽やかでさえあってね。

東日本大震災以降の混迷の世に置かれている人に出会ってもらいたいなと、
これを必要とする人のところに届けてゆこうと思っています。

イラストレーション池袋セッション season4

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池袋コミュニティーカレッジで開講の「イラストレーションクラブ」は、
毎月第2第4木曜日18時スタートのワークショップスタイルの講座ですが、
個人的に「池袋セッション」と呼んでいる絵の実験スタジオになっています。

先日9月22日は半年単位で区切られてるシーズン3の最終日。

10月13日からシーズン4スタートとなりますので、
参加希望の方は下記リンクより事務局まで申し込まれるか、
体験受講も逐次受け付けますので、お気軽に参加ください。
http://cul.7cn.co.jp/programs/program_701881.html

以下、ここ2回のレポート。
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9月8日は「和音と色」

息子の夏休みの自由研究でやった
音を聞きイメージする色を塗る」試みがとても面白くて、

もっとも、
このアイデアは池袋でのセッションの中で思いついたものだったので、
池袋セッション参加者ともやってみたいなと、
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5種類の楽器の音で「ド」の単音から始め、
「ドとレ」「ドとミ」と7種類の2声の和音を聞き色を想像する作業。

制約があるからこそ
1人ひとりの自由な発想が明快に感じられたし、
1人ひとりの心の深い部分まで可視化できたような、

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それでいて、
他者との「同質」な部分にヨロコビを見つけたり、

個性というものをあらゆる角度から見るチャンスを得た、
とても新鮮な試みになりました。

みんな楽しそうに筆を進めていたようで、
終わった瞬間に「つかれた〜」と、

この作業、心のどこの部分を使うんだろ?

ともかく、みんなが描いたシンプルな色のシミ、
その愛しさがたまらない「色彩の音符」が生まれました。

そして、
9月22日は持ち合わせていた110cm×3メートルの画用紙に、
参加者全員でセーノで筆を走らせてみました。
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この日のボクは昼前に熊本市内で子どもたちとデカイ絵を描いていたので、
池袋に集うオトナちゃんの自由度を確認してみたくなったかもね。

季節の変わり目で体調崩す人続出、、
いつもの3分の2ほどの参加者でのセッション。

で、
いつも以上に筆を振るったボク。
昼間の子どもから受けた影響を池袋でアウトプットするという大人気なさ!

「いつものメンバー」でやってきたこと、
ちょっとぶっ壊しておきたい気分もあったかもね。

1人ひとりの思惑が壊されてゆき、
しかし、すぐに創造の芽は芽吹いてくる。

大きな構図は切り刻まれ再構築、
複雑な構造を持った、
しかし結果シンプルな構図に育って完成。

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みんなほんと発想が柔軟になってきた。

そうやって生まれたものは、
一瞬は混沌としたものに見えるのだけど、
いやいや、向き合えば向き合うほど
どうにも愛しいものに育ってゆく。

そして、あらためて細部に視線を落とし「発見」
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ひとりの思惑が破壊された中から
「美しさ」や「おかしさ」「面白さ」などなど
構図と共に発見。

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「稚拙」で「揺れ」てて「うつろで」
そんな中にもキリッとしたものが生きていることを発見。

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濁った水でも、空の青さや人の心の美しさを映すことはあるね。
そんなこんなを発見、発見。

それは描くことと並行して取り組んでゆかねばならない作業。
めんどくさいけど、とても楽しく、豊かなことでもあるなあ〜。

で、
出来上がったこの絵、どうしよう?

と、
今回を区切りに建築の世界に踏み出すことを決めたIさんの
卒業証書として持って帰ってもらうことにしました。

迷惑だったかな?

でも、次の現場でも自分らしく。

こんがらがるようなことがあれば、
ここを思い出してもらいたいし、
またいつでも戻っておいで〜!
だしね。

まずは元気で!
peace!!

「とうだい」生まれました

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とうだい」美しく仕上がり本日発売になりました。
みなさまぜひお手に取り、とうだい君に出会ってください。
http://www.yakuin-records.com/amigos/?p=12572

昨晩はTISの企画の中で20冊を手渡しで販売しました。

そんな売り方がとてもうれしく思える「もの」です。

お買い上げくださっったみなさん、
末長くとうだいを宜しくお願いいたします。

今朝は息子の小学校のクラスと、卒園した保育園、
カミさんの勤める保育園へと旅立たせた「とうだい」
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半年前までは息子と歩いていた朝の保育園までの道で、
震災の次の日に書いたブログのことを思い出しました。

「灯」
http://www.yakuin-records.com/amigos/?p=5598

震災直後からずっと同じことを繰り返し語り続け、絵を描き、
少なからずの必然をもって「とうだい」の原作に出会えたんだと思います。

2011年3月11日以前の10年は、
ほんと良く日本のローカルをめぐり続けた10年でした。

その10年は、その土地になくてはならない、
それこそ灯台のような人との出会いの10年。

そんな1人ひとりは「名もなき善意のひとり」であり、
ボクのようにフラフラ歩きまわることもせず、
その場所で真摯に仕事に取り組み続ける人です。

だからボクは安心して旅を続けられ、
うん、ずいぶんと甘えさせてもらってたはず。

ではボクはなにが出来るんだろうか?

絵は、イラストレーションは、
どんなことが出来るんだろう?

東日本で起きた悲劇は、
否応無くそんな命題を突きつけてくるものでした。

福岡薬院あたりの人たち
大阪の船場や北堀江で出会った人たち
京都の北の方で志の場所を営む人
熊本の小さな本屋
諫早の元気な雑貨カフェ
那須で一杯のコーヒーに命をささげる人たち
山口でひーこら言いなが営むライブハウス
青森のじょっぱりな店主が営む茶葉店
八重山の島で生きることを決めた人
大分の森に暮らす一家
今はもう失われてしまった場所もあるけれど、
そんな心の灯台の灯を頼りに迷わず歩けた先で、
今は気仙沼唐桑の小さな灯台のような店にも出会い、
近所のコーヒー屋やパン屋やなんかと同じ空を見て、
保育園や学校なんてものに再会したり、

そこで出会った1人ひとりを思い、
どうしようもなく自分らしいものを作れた。

そういうことです。

「とうだい」

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ボクが作画を担当した絵本「とうだい」が
9月15日に福音館書店より発表されます。

日本傑作絵本シリーズ「とうだい」
斉藤倫:文 / 小池アミイゴ:絵

アートディレクション:柿木原政広(10inc.)
デザイン:西川友実(10inc.)

福音館書店刊 1300円+税
24X26cm、44ページ
ISBNコード:978-4-8340-8289-0
福音館amazon

2014年2月に開催した展覧会「東日本」
同タイトルで2度目の開催となった展覧会に、
福音館の編集者Sさんが足を運んでくださり、
展覧会のメインのビジュアルだったカモメの絵を見ながら、
ボクにぜひ描いてもらいたい絵本の原作があると。

その後いただいた原稿のタイトルは「とうだい」

詩人でもある斉藤倫さんの構築した言葉のとうだいは、
ソリッドに美しいものでした。

岬に立った「とうだい」は、
自分のいる場所から見える風景を愛しながらも、
渡り鳥たちが語る世界中の話に驚き、羨ましく思い、
ただそこに立ち続ける自分に疑問さえ感じはじめた。

が、

東日本大震災以降、東北沿岸部のフィールドワークを重ねてきたボクにとって、
利便性だけでは語ることの出来ぬ『その土地に暮らす意味』をさらに深く考え、
絵に反映させてゆけるはずだと思えたストーリーです。

特に、
何度も見てきた福島県いわき市の豊間のビーチから望む塩屋埼灯台の姿を、
そのまま描くわけではないのですが、
震災後の世界を生きる上で必要とされる心象風景として描けるんじゃないかと、

さらに現地を歩き、色彩や空気感を体に取り込み、
斉藤倫さんのとうだいが立つべき足場造りの準備を進めてゆきました。

そんな製作の途中では、担当編集者さんの産休があり、
(この本と年子な無事のご出産、おめでとうございます!)

昨年の夏の終わりには、やまぐちめぐみさんが亡くなり、
彼女が遺した大量の作品世界の奥深さにやられてしまい、
その後の作品整理や遺作展の準備から開催にかけてと
自分の絵を描くマインドが1mmも動かず、

「とうだい」の作画作業は大幅に遅れてしまったのですが、

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それでも、
昨年の冬から本格的に再開した作画作業は、
ボクの今までの人生のなかで最も美しく静かな時として、
今となっては思い返されるものになってくれました。

なにより、
息子が小学校にあがる前後での作画作業は、
彼自身、そして保育園で触れ合う元気なともだち、卒園式での涙、
入学式での晴れ晴れしさと、ちょっとの不安、
「はじめまして」のこどもたちの魅せる元気な風景などなど、
6歳の感性を思いっきり浴びた「とうだいくん」を描くことであり、
1つひとつの作業がとても愛しいものでした。

たまに「いいね」とつぶやいてくれる保育の現場に立つカミさんのひと言が、
なかなかの力になってくれたしね〜

その後のデザインの作業でも印刷の工程でも、
実に風通しの良いコミュニケーションのもと、
1mmでもベストなものに近づけてゆこうという
みなさんの情熱を浴びる現場が愛しくて仕方なくて、

なんやかやの遠回りも含め、すべてのことに意味があり、
みなさんから頂いたものを1枚1枚の絵に反映出来た絵本が完成しました。

ボクに今なにかあれば、
「ああ、とうだいの絵の人ね」と言ってもらえるんじゃないかと。

しかし、
今はこの本を必要とされる方に届けなくっちゃです。

みなさん「とうだい」どうぞよろしくおねがいします。

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発売日の前夜の特別手渡し販売
9月14日(水)18:30~20:30

銀座G8ギャラリーでのTISの「夏目漱石展」での企画「夜店」で
ブースをひとつ設けて限定20冊で販売いたします。

「とうだい」原画展
10月25日(火)~10月30日(日)

森岡書店 13:00~20:00
=森岡書店=
〒104-0061 東京都中央区 銀座1-28-15
03-3535-5020

その他いくつかのイベントが決まる予定ですが、
その辺は追ってお知らせしてまいりますね〜。

66ヶ月め

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今日は2011年3月11日から2011日め
5年6ヶ月
66回目の11日です。

今年の夏は週末ごとに子どもたちと遊ぶイベントを開催したことで、
ともかくバタバタあっと言う間に過ぎてしまいました。

そんなわけで、
8月の半ばに東北を巡ったことを振り返えらずにもはや9月。
遅ればせながらちょっとずつ言葉にしてゆこうと思います。

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8月12日
まずはいつもの場所、福島県いわき市の豊間のビーチ。

いわき市の「高久」の田園地帯から太平洋岸に抜け、
新舞子ビーチから塩屋埼の灯台、そして豊間まで、
今年は15kmのランニングのフィールドワークになりました。

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以前から比べると休耕地がグッと減った田園の風景。
豊かに実った稲穂は太平洋からの風に吹かれ
まるで海のように波打っていました。

その先、津波被害で荒れたままの印象だった場所には、
新たに立派なグランドが造られていて、
この日は少年野球の声が元気に響いていました。
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豊かな実りを見せる田んぼの風景。
そして湧き上がる子どもたちの声。

去年までは孤独のみがボクの伴走者のように思えた土地も、
今年は確かな夏の盛りの中にあるように思いました。

ビーチに出ると遠くの台風の影響を感じる波。
これまでで一番「太平洋」を感じた福島の海です。
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津波の被害を思うと、
毎回少なからずの恐怖が湧いてくる海の風景も、
さっき聞いた子供達の声は恐怖の意味を書き換えてくれ、
これまでより一歩海に近づくマインドを後押ししてくれました。
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集落を抜ける坂を登り、切り通しの道を行くと、

!?

切り通しを形作っていなければならないはずの山がひとつ、
失われている、、
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そして、
切り通しだった道を抜けると

月面
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去年来て見た時も驚いたはずの風景だけど、
去年以上に「ああー、」と声が出てしまった風景。

切り通しの山だけでなく、
その先のいくつかの山が失われ「高台」に生まれ変わっている土地。

何度も歩いた場所だけど、
人類が初めて歩いた月面のイメージのようだ。

津波で失われた直後に歩いた時、
同じく「月面」という言葉がこぼれてきたのだけれど、
その言葉の質は、今は上手く説明出来ないけれど、
ともかく異質なものであるはずです。

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高台の鎮守様から街だった場所を俯瞰してみても、
まったく想像力が追いつかず、
しょうがない、なにかの歌を大声でうたうしかなかったボクです。

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復興の青写真が記された掲示板を見てみると、
なるほど、これはこれで理にかなった計画なんだと納得は「出来た」けど、

今は混乱している自分を受け入れ、
この先出会うべくして出会うものに一々驚いてゆけばいいんだと、
自分に言い聞かせながら走ってゆきました。

あらためて、
ボクは今も東日本大震災の混乱の中にあるのです。

そんな風景の先に所在なさげに見える一本の灯台。
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いつも以上に「あの灯台に近づかなくちゃ」て気持ちが強く働きます。

塩屋埼の灯台の足元には、
去年までよりずっと多くの人が集い、
太平洋に触れていました。
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視線を転じれば、未だ子供達の声が戻っていない土地なんだけど、
「とうだいくん、キミはあれから5年たってもここに居てくれてるんだ」
そんな安堵感とともに親近感が深まった5年めの夏。

この感じ、
ほかの土地では置き換えられる「なにか」があるのだろうか?

「被災」というキーワード抜きにしても、
これから足を運ぶ土地ごとに確認してゆきたいことだと思ったし、

この土地に子どもの声が返ってくる日があるのなら、
それまで通い続けてみなくっちゃと、
東京オリンピックも終えた5年後、
震災から10年の2021年の方を見ながら確信的に思いました。

さらに切通しをひとつ抜けると豊間のビーチ。
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2011年6月11日に初めてこの海に出会ってから、
何度も足を運んできた5年目の夏の豊間。

美しかったなあ〜
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あらたに建造された防潮堤は、
以前より長い影をビーチに落とすようになっていたけれど、
そこからわずか2~3度視線を海や空に振れば、

なんだろ、太平洋って。

なんだろ、この空やこの風って。

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何度も見たはずの風景だけど、
そこには答えは埋まっていなくて、
もちろん正解なんてものも無くて、

もし答えらしきものが必要であれば、
日々1人ひとりが自身の中から掘り出してゆくしかなく、

この美しい風景は圧倒的な懐の深さでもって、
それを愛する1人ひとりに想像の余地を与え隣り合わせてくれてるんだ。

5年通って初めて出会えたそんな考え。
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あらためて、この土地を愛し、ここに暮らした人たちのことを思い、
しかし、やはり自分の想像力の乏しさを知り、
「また来ます」と心の中でつぶやいた夕暮れ時の豊間のビーチ。
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小学四年生の男の子がお母さんに教えられサーフィンをする姿が、
どうにもエレガントで美しいものだと思えてね〜、
しばらく、帰りのバスの時間いっぱいで見ていました。
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初めて豊間に行った2011年6月11日には、
鉄骨だけ残った店舗で「根性営業」をしていたセブンイレブン。

その後店舗を再建し、
この地域の復興の「灯台」のような存在でいたはずだけど、

8月末にこの場所での営業を終え、
200メートルほど南に移転し、新店舗での営業に切り変えるとのこと。
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それがどんなことなのか?
どんな風景を見せるのか?

うん、またこの場所に来て確認してみよう。

この日は初めていわき市内で一泊。
なにげなく入った焼き鳥屋がとても良くてね〜
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居合わせたお客さんやお店の方となんやかや言葉を交わし、
自然と震災の話なども浮上してくるけれど、
それ以上に、この人たち好きだなと。
(もちろん福島の酒が美味い!!)

ほんんとこれからもゆっくりジックリおつきあいしてゆきたいと思った街、
そして、いわきの人たちです。
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あくる日ボクさらに北を目指しますが、
ちょっと長くなってしまうので、その辺はあらためて。

個人的な話になりますが、
9月15日に福音館から上梓される「とうだい」という絵本の作画を担当しました。
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3年前に編集者がボクの展覧会「東日本」に足を運んでくださり、
このテーマにぴったりだということでご指名を受けました。

それ以前もそれ以後も豊間にや塩屋埼に通いインスパイヤされたことが、
絵に反映されている絵本です。
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2011年3月11日に出会ったことは、
ボクを大した目的も持たず東北沿岸部に跳ね飛ばしてゆきましたが、

そこでの経験が少なからず反映されたものが作れたこと、
本当にうれしく思うとともに、

この作品に出会う方がなにを感じ思うのかを丁寧に受け止め、
次に作るものがさらに確かなものになるよう取り組んでゆけたらと願います。