2018 年 11 月 のアーカイブ

絵本「うーこのてがみ」

2018 年 11 月 28 日 水曜日

来週の水曜日、自作の絵本が刊行されます。

「水曜日郵便局 うーこのてがみ」
ある水曜日のお話です。うーこさんはうーたくんにお手紙を出しました。

文・絵 小池アミイゴ
定価:1,404円(本体1,300円+税)
発売日:2018年12月05日 判型:A4変形判
ページ数:32 ISBN:9784041073469

「わたしはとてもきれいなばしょでくらしていたんだ」
うーこさんはうーたくんからの手紙を読んで思うことがたくさんありました。
手紙を通して、身近にあるうつくしいものや、ことに、気づかせてくれるやさしい絵本。

2011年3月11日以降、東日本の地を歩き、風景や花の絵を描いてきました。

そんな先、2013年の1月に、塩釜港の復興市場の直売所で出会った女性から一通の手紙を頂きました。

そこに綴られた震災のこと、それ以前の大切にしてきた思い出、
空を見上げたらカモメが飛んでいたこと、初出勤の際に見たシロツメクサのこと、
愛するご主人さんのこと、ちょっと未来のこと。

生き生きとした筆致で綴られたごく個人的な物語に出会い、
ボクは「3・11」と呼ばれた悲劇に対して描くべきことの像がキリッと結んだように感じました。

そうして描いた塩釜の海の上を飛ぶカモメの絵は、
ボクをさらに次の場所へと導いていってくれ、そこから多くの作品が生まれました。

その中の仕事のひとつが「赤崎水曜日郵便局

この仕事はボクを熊本県の津奈木町に呼び寄せ、熊本の地震を我が事と思わせ、
天草へ誘い、羽田の空を彩り、

もしくは「とうだい」という絵本に結実し、

今年は宮城県の東松島の宮戸島へ、「鮫ヶ浦水曜日郵便局」に関わることになり、
そもそも「鮫ヶ浦水曜日郵便局」は「とうだい」にインスパイアされた企画でもあるそうで、
この絵本の制作の依頼を受け、宮戸島を歩き、自然の恵み深きこの場所を舞台に構想を練り、
そして、シロツメクサの記憶を頼りに松島湾をグルッと下り、塩釜に帰ってきました。

この制作の途中に、ボクに手紙を届けてくださった方の急逝に逢い、
そのことは未だ自分の中で咀嚼出来ずにいるのですが、
しかし、彼女が届けてくれたことは、この絵本の中に生かしてゆけるはずと、

「絵にできることってなんだろう?」との自問はあれから7年8ヶ月の今も変わらずありますが、
しかし、「絵にできること」はこれからが本番だという実感のもと、
今までだったらカッコつけてしまっていたであろう気持ちを蹴破り、
「かわいい」ってことに照れることなく、作画を進めてゆきました。

この物語が、お母さんとお子さんの日々の穏やかな会話を生んでくれたらいいな。
拙いところは多々あるかと思いますが、心からそう願っております。

気持ちの良い編集を注ぎ続けてくださった角川の加藤さん。
思いがけぬアイデアで物語をスムースに進めてくれた、やはり角川のデザイナー須田さん。
「水曜日」の発案者で、この企画を投げてくれた映画監督の遠山昌司さん。
企画を推進してくれたP3のみなさん。
東松島でお会いしたみなさん。
塩釜の共栄丸水産ご一同さん。
シロツメ草の思い出を届けてくれた水間さわ子さん。

ありがとうございます。

92ヶ月め

2018 年 11 月 9 日 金曜日


今日は2011年3月11日から2,802日め。
400週2日
7年8ヶ月
92回めの11日です。

と言いつつ、
今は11月9日で、会津若松の駅前のホテルでキーボードを叩いています。

明日早朝、ある仕事の作画のためのフィールドワークで奥会津へ。
その後、あらたに行う子どもとお年寄りを絵で結びつけるプロジェクトの現地へのご挨拶で、
さらに会津の深い場所へ。

そして明後日11日は、
とても仲良くさせてもらっている福島市の食堂ヒトトと、
ヒトトが使っている美味しい野菜の生まれる畑 大江ファームとボクとのコラボで、
畑の上でのワークショップを開催します。

そのため、きっと11日にブログをアップ出来なであろうと、
このタイミングで書いています。

そんな福島県移動の手前で、2冊の絵本の制作が佳境を迎え、
そのうち1冊は、さっき新幹線に飛び乗る直前で編集者との推敲を済ませてきました。

「うーこのてがみ」と題した絵本は、
水曜日の出来事を手紙にしたため、水曜日だけやっている郵便局に送ると、
誰か知らない人の使用日の出来事がしたためられた手紙が帰ってくるというアートプロジェクト、
鮫ヶ浦水曜日郵便局」に付随する形で発表されるものです。

もっともストーリーはボクのオリジナル。

震災後の塩釜で出会い、
何度か手紙をいただいた方の言葉から着想を得ています。

先日は鮫ヶ浦のある宮城県東松島市の宮戸島へ。

鮫ヶ浦周辺の自然や人の暮らしと出会い、
「鮫ヶ浦水曜日郵便局」に関わるみなさんと会い、多くを語ることで、
あらためてこの絵本の背景に塗り込むべきものを確認してみました。

絵本の作画が半分ほど進んだ段階でしたが、
ほんと、行ってよかったーーー!です。

ここでお伝えしたいことたくさんだけど、
まずはひとつ。

水曜日郵便局局長にして映画監督の遠山昇司さんとうかがった、
東松島宮戸島ガイドの木島さんのお家でうかがった、
2011年3月11日「あの日の」こと。

身振り手振りで表現される辛く悲しい出来事

木島さんの言葉を聞き、その身振り手振りに触れると、
ボクの心の中では被災はつい先日のことのようにして、
目の前の美しい風景を呑み込んでゆくのです。

ボクはこの土地を題材にした絵を描き絵本にする作業の真っ只中にあって、
あらためて、描くことの怖さと、しかし、だからこそ描かなければならないことを、
知ることが、出来たか、なあ〜〜〜、、

出来上がる絵本は、実にのほほんとした空気に包まれたもの。

そんなものを必要としてくれる人、
ちゃんと視界に捉えられるよう視野を確保しながら、
美しい絵本を作ることが出来るよう頑張ろうと思います。

東松島を下って塩釜では、
この絵本の着想を与えてくれた人のご家族とお会いして、
いろんなことを語ったな〜。。

この辺は絵本ができたらたっぷりと。

ただ、以前からお約束していた、塩釜で展覧会を開くこと、
来年3月に実現出来そうです。

その辺の情報も後ほど。

ただ、ここに至るまで、
東北の太平洋沿岸部に限らず、
東京で、熊本で、諫早で、福島で、会津で、
そのほかにも色んな場所で出会ってきた「ひとり」の顔を思い浮かべることの出来る、
あの日から400週たった今のボクです。