忘れな草をあなたへ

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今日、横浜仲町台での展覧会で忘れな草を描いた絵が売れました。

午後にギャラリーに着くと、
スタッフさんから絵の購入希望の話しをうかがい、
お待ちくださっていた女性を紹介されました。

初めましての方。

この展覧会に足を運ばれた経緯をうかがい(ギャラリーからのDMで知った)、
どの絵を購入希望なのかをうかがうと、
「忘れな草」の絵だとのこと、

その女性の落ち着いた佇まいや、この日のコーディネートなど、
この絵と実にフィットしているなあ〜と、
この方がこの絵を買ってくれるということに
今まで味わったことの無い「安心感」のようなものを感じました。

「なぜこの絵を選びましたか?」
というボクの質問に、

「気に入った絵全部、1枚1枚と会話してみたんです」って、

うれしいなあー

ボクは「東日本」という展覧会を、
偶然出会った人と人の会話の現場にしたいと考え、
そうすることでこの展覧会は完成するのだとさえ考えていました。

それを「初めまして」の方が、
ボクの望む最上の方法でこの現場を楽しまれ、
1枚の絵を購入さえしてくれた。

そもそも、決して安い買い物ではないはずのボクの絵を、
見ず知らずの方が買って下さるなんてことは
滅多にある事ではなく。

しかも、この絵は直前の青山には出品せず、
横浜仲町台のこの現場だからこそ、
「東日本」という言わば痛いタイトルの展覧会に
テンダネスを与えてくれるだろうって考え、 
追加で持ってきたものでもあって、

その一期一会の喜びを
その女性と分かち合いながら、

「どちらからお越しですか?」と質問。

「葉山です」と彼女。

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この絵を描いたのは2011年3月11日の震災直後。

3月11日の手前で頂き
花瓶にさしていた忘れな草。

震災から8日後、
もともと予定していた帰省で
カミサンの実家の北九州へ。

東日本の様子が不透明だったので、
リスクを考えカミサンと息子の滞在を延長させ、
ボクは5日間の滞在後
ヒトリで東京に戻ることに。

大きな余震も続いていた東京、
まだ冷たい空気に包まれていた家の中で、
ボクは忘れな草がさらに枝を伸ばし花を咲かせていたのに出会いました。

「おまえ、よくがんばっていたなあ〜」ってね、

そのけなげな美しさと儚さに心をわしづかみされ、
震災後の暗闇の中
4月末から予定していた「その辺に咲いていた花」というタイトルの展覧会のため、
“生き残り”の忘れな草を描きました。

その直後に届いたのが、
永井宏さんの訃報でした。

美術家で文筆家で音楽家で、
自由と恋愛を愛し59歳で逝ってしまった永井さん。

ボクは人生の節目節目で永井さんから気にかけて頂き、
なんだろな、ちょっと似たとこあるのかな、どうかな、、
そんなフワッとした心地よい距離感を保ち、
氏の活躍を目で追っていたような関係でありました。

生き残った忘れな草へのインスピレーションは、
永井宏さんがボクに届けて下さったもののように感じ、
さらに絵にちょっと手を加え、
心の底の方で「永井宏さんに捧げる」とメモし、額装した絵。

そんな秘めた経緯は今まで口にしたことはなかったのだけど、

絵を購入された方が忘れな草の絵ととてもお似合いで、
しかもこの絵と会話までしてくれたということがうれしくて、つい、
「葉山に住まわれ、絵を描いたり本を出版したりしていたけど、
 震災の年に亡くなってしまった方に捧げた絵なんすよ、」なんて話してみたら、

「その方、もしかしたら私の患者さんかも、」と、

ボクが「永井さん」の名前を告げると、

「はい、永井さんの最後の治療を担当していたのは、わたしです、」

絶句

そして涙

その方は葉山で開業医をされている方で、
永井さんの治療の一翼を担われていた方だったのです。

彼女に前述の永井さんの想い出話しを語り、
なにより、永井さんと初めて出会ったのは、
このギャラリーの企画を担っている
青山のspace yui という場所だったことを話し、
あらためて、
この絵はあなたに手渡されるために描かれたんですねと。

ボクは「奇跡」とか「サプライズ」という言葉が苦手で、
しかし、今日のこのことをどんな言葉で表そうかと、

ボクは青春のある時期に絵を描き始め、
長沢節という美意識を浴び、
数多の先輩イラストレーターの方々に生きる厳しさ学んだことで、
青山のyuiという美意識の場所で
永井宏という恋する心に出会うことが出来た。

そういったことの1つひとつは
ボクに”生き残りの忘れな草”を見る目を与えてくれ、
出会いの喜びは震災のリアルと拮抗しながらも、
ボクに1枚の絵を描かせた。

その絵は2年前にyuiの壁を飾ったけれど、
今年の冬は、そこを飛び越え、仲町台の空間を飾った。

それを永井さんに縁の深い方が手にしてくれた。

必然の先に
さらに必然が
偶然やってきた

ボクは今日ほど絵を描いてきて良かったと思えた瞬間は無く、
ボクが生きてきた意味さえ知れたように思いました。

今ボクが死んでしまっても
「ボクはこんな絵を描いたヤツだった」ってね。

もちろん、今は死ぬ訳にはゆかず、
今日手にした喜びを抱え、
仲町台での残りの会期を過ごし、
小池アミイゴ個展「東日本」西日本ツアーで、
さらに心の体力をつけ、
いつの日か、
東北の方にも喜んで頂けるものへと育ててゆきたい。

そんな表現の旅の足場になるのは、
忘れな草と永井さんと女医さんとボクの間で生まれた
ささやかな出会いと別れのヨロコビの記憶。

ボクが震災後の世界に求めていたのは、
もしくは「東日本」を巡り構築したかったことは、
今日のこの出会いと分かれのヨロコビに集約されているのかもしれない。

絵の婿入り先となった方との別れの時、
「握手しますか」と言ってみたけど、自然とハグになった。

永井さん
あなたの夢見た世界は
こんなじゃないかったかな?

そしてyuiの木村さん
あなたの創りたい世界は
こんなじゃないかな?

イラストレーションの仕事の締め切りがあるため、
午後3時過ぎにはギャラリーを後にするも、
ギャラリーからの角を曲がってすぐの花屋の前で
ハッハッハ、
これは笑っちゃうよな〜

210円で売られている
忘れな草と目が合ってしまったよ。
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そんな初恋の成れの果てのような花を抱え、
帰りの電車に飛び乗るも、それは逆方向、、

次の駅で降りて、
駅のホームのベンチで
お客さんからの差し入れのドーナツを食いながら、
折り返しの電車を待っていたんだ。

2014
0226
PEACE!!
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追記
小池アミイゴ個展「東日本」=巡回展= THE GARDEN + shop B
3月2日(sun)まで
さらに風通しの良い現場として
みなさまのお越しをお待ちしております。

open:11:00-19:00
神奈川県横浜市都筑区仲町台1-33-1
tel:045-949-4911

さらに詳細 http://bit.ly/1asnd6L

コメント / トラックバック 4 件

  1. チカツタケオ より:

    本当に感動的な話でした。それこそ震災後、絵ってなんだろう。絵で何ができるのだろうと考えていましたが、大勢の人が対象でなくても、こういう事、こういう出会いの喜びを共感出来る事が大切なんだなと思いました。これからも小池さんの素晴らしい絵と出会いを楽しみにしています。

  2. 小池アミイゴ より:

    >チカツタケオさん。
    昨日は良き語らいの時、ほんとありがとう。
    こんなことがあった直後で、
    こんな話しを真摯に積み重ねられたこと、
    自分がこれから生きてゆくための足場を、
    バンバンと踏み固められたような感じがして、
    すげー有り難かったです。

    そんなこんなは、極私的な恥ずかしい話しでしかないはずで、
    しょうがねえ、また絵を描いておこうと思うのであります!

    で!
    大勢じゃなくても、まずはオレがチカツさんの絵を楽しみにしてるってこと、
    ちょっと信じちゃって、次への力に変えてっちまってくださいね〜〜!

  3. ウツイナツコ より:

    アミーゴさん

    初めまして。こんにちは。

    セツに少し通っていた際
    たくさんの方からアミーゴさんのお名前を耳にしました。

    代田橋では活動の姿を拝見しました。

    その時会場で、何か目には見えないけど、心が元気になる何かを頂きました。

    また、今回の素敵な出逢い、
    巡り合わせ、想いが繋がって行く事、
    アミーゴさんの活動を通して感じさせていただきました。

    有難うございます。

    アミーゴさんのご活躍これからも楽しみにしてます(*´-`)

  4. 小池アミイゴ より:

    >ウツイナツコさん。
    ボクの「東日本」の現場にお立ち会いくださり
    ありがとう!

    もしボクのいろんな活動を通して
    心の元気を感じてくれたのであれば、
    それはもともとウツイさんの中にそれだけの力があったということで、
    ボクはそれを信じて、また次の現場でも、
    みなさんの心をもみほぐし、固く締まったフタが緩むようなもの、
    創ってきますよ。

    そうするためには、
    やはりこうやってメッセージを届けてくれことは、
    ボクの元気を生むなあ〜と。

    ボクらの間で手渡される
    心の再生可能エネルギーを感じるのであります!

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