51ヶ月め

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今日は2011年3月11日から4年3ヶ月
1,553日
51回めの11日です。

去年の冬の個展の直後の3月初旬、
東北太平洋沿岸部を北から南へと下ってみた旅
のはじめ、
大雪の青森市の友人の店の軒先の灯油タンクの上で
身を寄せ合っているスズメを見ました。

その直後でボクは発熱。
東北の冬の寒さに負けたようです。

東北の冬の厳しさに触れ、
それでも、
震災で家を追われ寒さに凍えた人の辛い思いに半歩も近づけいない
4年3ヶ月後の自分。

日々とは、寒さも暑さもスルスルと喉元を通り過ぎていってしまうものですが
それでもなんとか記憶を掘り起こし、
ともかく美しい絵を描き続けなければです。

2011年3月11日以降、
ボクは自身の実感のみを頼りに震災に向かってきたはずです。

そうやってきた中で、
現地の方との顔の見える関係も生まれてきた
「あれから4年後」とよばれる今、
あらためて読んでみた本があります。

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福島県いわき市生まれの社会学者 開沼博さんが
東大に提出した修士論文をベースに執筆し、
偶然にも2011年3月11日を挟んで刊行された一冊、
『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)

もはやあらゆる場所で語られてきた本ですが、
ボクは自分の東北でのフィールドワークを重ねた上で、
これを読むことが出来て良かったなと。

内容は、日本での原発行政の成り立ちを描きつつ、
その芯は深い郷土愛と、
それを変貌させてしまう力、
これは国や政財界や地方行政などの「権力」だけでなく、
その土地に暮らす1人ひとりの中で芽生える排他的な「力」であり、
もしくは、
「中央」に暮らすボクたちの、リスクは押し付け傍観、
さらには忘却に至る「負の力」をも含めた「力」
それに対する激しい憤りの著作。

群馬で生まれ育ったボクが失ってきた郷土の美しい風景や暮らし、
その喪失感の窓から見ていた世界のあり方と、
開沼さんがフィールドワークして得た福島の実感は
多くの部分で合致するものでした。

福島第一原子力発電所の事故に対し、
ボクは自分の無力と無知を認めるしか手がないように思っています。

ただ、故郷を追われた人の気持ちがどんなものであるのか?
そのことだけは意識して見てゆかねばと考えています。

そこを置き去りにして更新されてゆく社会は
果たして魅力あるものなのだろうか?

自分が、それ以上に息子が生きてゆく世界が
「どんなものであっててもらいたのか」を考えることと並行させて、
失われてゆくものへの視線をさらに鍛えてゆこうと思うのです。

長崎 のコピー
そんな考えの深まりの中、
イラストレーションの仕事のきっかけで長崎の街を歩いてみたり、
何度も足を運んだ沖縄に関する著作などにも目を通しているこの頃。

あらためて自分の今の生活の現場から長崎や沖縄に向かってみると、
そこにではやはり郷土を失った1人ひとりの存在にたどり着きます。

それは、東北を巡ったことで手にしたものが見せてくれるパーソナルな風景。

そうやってたどり着いた場所から、
今度は逆に東北の被災地と呼ばれる場所を眺めてみたり。

個人の考えとしての「復興」の姿、
徐々にフォーカスが合って見えてきたように感じています。

そんなことも描く絵に反映させてゆかなければです。

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6月13日から24日まで
メリーゴーランド京都で開催の展覧会
「記憶のレシピ」に参加します。
http://kazoku-magazine.com/kyoto/
(上記リンク先をスクロールダウンさせると詳細があります)

音楽ユニットPoPoyansで活躍してきた友人のノンちゃんが
家族とともに編集刊行した雑誌
家族と一年誌「家族」

わたしについて

震災以降、生活をとことん見直す姿を、
少なからずの痛々しさも含めさらけ出し見せることで、
多くの共感者との対話を続けてきた彼女。

彼女が雑誌を作っていることは知っていて、
その相談を受けてもいたのだけれど、
ここまで素晴らしくコアな発想の雑誌が生まれるとは思いませんでした。

ひとつの家族の1年の生活を追いかけ、
それだけで1冊の雑誌にしてしまう。

それはボクが目的も持たず漠然と東北を巡ってきた中で、
徐々に見えてきた向かうべき場所と同じ質感のもの。

その発刊に伴い、さらに多くの人との直接の対話のきっかけを生むべく
企画されたイベントのひとつの展覧会が「記憶のレシピ」

家族を思うときどうしても蘇る食の記憶を
参加者それぞれの表現で形にして展示されます。

ボクはちっちゃい頃めんどうを見てくれたばーちゃんの太巻き寿司を
絵にしました。

それを語るために、
以前描いたばーちゃんの家の絵を京都に送りました。

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群馬の典型的な養蚕農家は、
食に関して多くの部分で自給可能な小さな宇宙のような場所だったけど、
高度経済成長期が終わる直前で取り壊され建て替えられました。

その最後の方で、ボクはばーちゃんのこさえたメシを食べて育った。

ということは、
ボクは明治とか江戸時代からつながる暮らしに触れていた時期があったということ。

その意味深さをあらためて思い、
しかし、その喪失の重大さをあらためて考え、
太巻きの絵とともにこの絵も並べることに。

展覧会期間中会場に足を運んでみるつもりですが、
そこで出会えた方と交わす言葉はどんなものになるのだろうか?
そこからまた東北にアプローチするアイデアも気づきそうな予感と共に、
楽しみにしています。

そして東京では13日に青山のHADEN BOOKSで
19回目の開催となる「本・つながる・未来」
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バイオリニスト金子飛鳥さんとスチールパンの青木賢三さん、
そして青木さんとふさこさんのユニット うぐいすパークの共演。

飛鳥さんの呼びかけで始まった
3月11日以降ほんとうに必要とされる表現を創造する現場。

良い音楽が生まれるからこそ、
風通しの良い会話の現場となりうるはずと、
今回で19回を重ねてきました。

梅雨時の鬱陶しさも沈める音と音のモザイク模様の爽快さ。

なにより「続ける」意味を感じつつも、
この日だけの表現の現場、ぜひお立ち会いくださいませ。

『本・つながる・未来』project live vol.19
金子飛鳥 × 青木賢三 そして うぐいすパーク LIVE
「反射と対話」with 小池アミイゴ

2015年6月13日(土)open 18:00 / start 18:30 〜
予約 3,000円 (うち500円を震災チャリティーに充てます)

終演後に「宇宙弁当の会」を開催します。
宇宙弁当&1ドリンク付き 1,000円 (事前にご予約くださいませ)
*青山界隈で人気の酵素玄米を使った宇宙弁当を食べながらの語らいの時
*青木賢三さんによる「初めてのスチールパン講座」も予定

予約:HADEN BOOKS
http://www.hadenbooks.com

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今は日々のイラストレーションのの仕事と共に、
8月20日から青山のspace yui で開催の個展の準備を進めています。

以下、今回の展覧会に寄せた言葉、
掲載しておきます。


小池アミイゴ個展「東日本」そして西日本漂白
青山 space yui
8月20日(木) ~ 29日(土)

「東日本」をテーマに日本の各地を歩いて出会った美しい風景や花や人の営み。
ペンインティングやドローイングと共に、
生活に根ざした唄を創造する音楽家とのコラボ映像を展示します。

2011年3月11日以降を生きるために必要な美しさを削り出して行く。
そんな考えの元で絵を描き、今回で3度目の開催となる「東日本」です。
2012年3月と2014年2月に開催し、その後1年をかけて西日本の各地を巡回させた展覧会は、
足を運んでくださった多くの人との間に、風通しの良い会話を生む現場にもなってくれました。
1枚の絵があるからこそ始まる会話。そんな経験の積み重ねは、絵の可能性を指し示してくれたし、
実は、多くの人が未だに3月11日で立ち止まったままであることにも、気付かせてくれました。
あれから4年めの夏。絵に出来ることはいよいよこれからだろうという確信は深まり、
展覧会のタイトルはやはり「東日本」で開催することにしました。

震災以降定点観測的に足を運んでいる、福島県いわき市豊間のビーチ、宮城県の塩釜や気仙沼、岩手県宮古の風景。
『東京からの視点』を疑ってみようと、東北沿岸部から雪の津軽から南へと下った旅。
展覧会の西日本巡回の中、大分から熊本-長崎-福岡と巡った初夏の旅。瀬戸内を漂白した淡路から尾道までの真夏の旅。
「復興」という言葉に縛られることなく「東日本」を眺めてみると、描く風景の中に自然と人が登場し始めた今回。
ボクの描いた絵の前に立つ人、1人ひとりこそが主役であるような世界を思い描いた展覧会にします。

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