66ヶ月め

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今日は2011年3月11日から2011日め
5年6ヶ月
66回目の11日です。

今年の夏は週末ごとに子どもたちと遊ぶイベントを開催したことで、
ともかくバタバタあっと言う間に過ぎてしまいました。

そんなわけで、
8月の半ばに東北を巡ったことを振り返えらずにもはや9月。
遅ればせながらちょっとずつ言葉にしてゆこうと思います。

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8月12日
まずはいつもの場所、福島県いわき市の豊間のビーチ。

いわき市の「高久」の田園地帯から太平洋岸に抜け、
新舞子ビーチから塩屋埼の灯台、そして豊間まで、
今年は15kmのランニングのフィールドワークになりました。

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以前から比べると休耕地がグッと減った田園の風景。
豊かに実った稲穂は太平洋からの風に吹かれ
まるで海のように波打っていました。

その先、津波被害で荒れたままの印象だった場所には、
新たに立派なグランドが造られていて、
この日は少年野球の声が元気に響いていました。
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豊かな実りを見せる田んぼの風景。
そして湧き上がる子どもたちの声。

去年までは孤独のみがボクの伴走者のように思えた土地も、
今年は確かな夏の盛りの中にあるように思いました。

ビーチに出ると遠くの台風の影響を感じる波。
これまでで一番「太平洋」を感じた福島の海です。
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津波の被害を思うと、
毎回少なからずの恐怖が湧いてくる海の風景も、
さっき聞いた子供達の声は恐怖の意味を書き換えてくれ、
これまでより一歩海に近づくマインドを後押ししてくれました。
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集落を抜ける坂を登り、切り通しの道を行くと、

!?

切り通しを形作っていなければならないはずの山がひとつ、
失われている、、
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そして、
切り通しだった道を抜けると

月面
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去年来て見た時も驚いたはずの風景だけど、
去年以上に「ああー、」と声が出てしまった風景。

切り通しの山だけでなく、
その先のいくつかの山が失われ「高台」に生まれ変わっている土地。

何度も歩いた場所だけど、
人類が初めて歩いた月面のイメージのようだ。

津波で失われた直後に歩いた時、
同じく「月面」という言葉がこぼれてきたのだけれど、
その言葉の質は、今は上手く説明出来ないけれど、
ともかく異質なものであるはずです。

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高台の鎮守様から街だった場所を俯瞰してみても、
まったく想像力が追いつかず、
しょうがない、なにかの歌を大声でうたうしかなかったボクです。

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復興の青写真が記された掲示板を見てみると、
なるほど、これはこれで理にかなった計画なんだと納得は「出来た」けど、

今は混乱している自分を受け入れ、
この先出会うべくして出会うものに一々驚いてゆけばいいんだと、
自分に言い聞かせながら走ってゆきました。

あらためて、
ボクは今も東日本大震災の混乱の中にあるのです。

そんな風景の先に所在なさげに見える一本の灯台。
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いつも以上に「あの灯台に近づかなくちゃ」て気持ちが強く働きます。

塩屋埼の灯台の足元には、
去年までよりずっと多くの人が集い、
太平洋に触れていました。
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視線を転じれば、未だ子供達の声が戻っていない土地なんだけど、
「とうだいくん、キミはあれから5年たってもここに居てくれてるんだ」
そんな安堵感とともに親近感が深まった5年めの夏。

この感じ、
ほかの土地では置き換えられる「なにか」があるのだろうか?

「被災」というキーワード抜きにしても、
これから足を運ぶ土地ごとに確認してゆきたいことだと思ったし、

この土地に子どもの声が返ってくる日があるのなら、
それまで通い続けてみなくっちゃと、
東京オリンピックも終えた5年後、
震災から10年の2021年の方を見ながら確信的に思いました。

さらに切通しをひとつ抜けると豊間のビーチ。
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2011年6月11日に初めてこの海に出会ってから、
何度も足を運んできた5年目の夏の豊間。

美しかったなあ〜
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あらたに建造された防潮堤は、
以前より長い影をビーチに落とすようになっていたけれど、
そこからわずか2~3度視線を海や空に振れば、

なんだろ、太平洋って。

なんだろ、この空やこの風って。

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何度も見たはずの風景だけど、
そこには答えは埋まっていなくて、
もちろん正解なんてものも無くて、

もし答えらしきものが必要であれば、
日々1人ひとりが自身の中から掘り出してゆくしかなく、

この美しい風景は圧倒的な懐の深さでもって、
それを愛する1人ひとりに想像の余地を与え隣り合わせてくれてるんだ。

5年通って初めて出会えたそんな考え。
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あらためて、この土地を愛し、ここに暮らした人たちのことを思い、
しかし、やはり自分の想像力の乏しさを知り、
「また来ます」と心の中でつぶやいた夕暮れ時の豊間のビーチ。
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小学四年生の男の子がお母さんに教えられサーフィンをする姿が、
どうにもエレガントで美しいものだと思えてね〜、
しばらく、帰りのバスの時間いっぱいで見ていました。
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初めて豊間に行った2011年6月11日には、
鉄骨だけ残った店舗で「根性営業」をしていたセブンイレブン。

その後店舗を再建し、
この地域の復興の「灯台」のような存在でいたはずだけど、

8月末にこの場所での営業を終え、
200メートルほど南に移転し、新店舗での営業に切り変えるとのこと。
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それがどんなことなのか?
どんな風景を見せるのか?

うん、またこの場所に来て確認してみよう。

この日は初めていわき市内で一泊。
なにげなく入った焼き鳥屋がとても良くてね〜
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居合わせたお客さんやお店の方となんやかや言葉を交わし、
自然と震災の話なども浮上してくるけれど、
それ以上に、この人たち好きだなと。
(もちろん福島の酒が美味い!!)

ほんんとこれからもゆっくりジックリおつきあいしてゆきたいと思った街、
そして、いわきの人たちです。
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あくる日ボクさらに北を目指しますが、
ちょっと長くなってしまうので、その辺はあらためて。

個人的な話になりますが、
9月15日に福音館から上梓される「とうだい」という絵本の作画を担当しました。
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3年前に編集者がボクの展覧会「東日本」に足を運んでくださり、
このテーマにぴったりだということでご指名を受けました。

それ以前もそれ以後も豊間にや塩屋埼に通いインスパイヤされたことが、
絵に反映されている絵本です。
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2011年3月11日に出会ったことは、
ボクを大した目的も持たず東北沿岸部に跳ね飛ばしてゆきましたが、

そこでの経験が少なからず反映されたものが作れたこと、
本当にうれしく思うとともに、

この作品に出会う方がなにを感じ思うのかを丁寧に受け止め、
次に作るものがさらに確かなものになるよう取り組んでゆけたらと願います。

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