65ヶ月め

益城コスモス1000
今日は2011年3月11日から1980日め
5年5ヶ月
65回目の11日です。

コスモスの花を描きました。

7月の末に足を運んだ熊本。
熊本地震で大きな被害を受けた益城町で出会った
かわいこちゃんのコスモスです。

そこから目を転じると、
テレビやネットなどのメディアでは実感することの出来なかった
「被災の現実」が圧倒的な存在感をもって迫ってきます。

それは東日本で経験したのと同じく、
ボクを思考停止にするものでした。

恐怖や憤りといったものが圧縮されてぺちゃんこになって置かれている街。

それがどういうものか考える力をボクは持たず、
被災された1人ひとりへの想像力もまったく追いつかず、
カメラのレンズを向けることさえ思いつかぬまま、
ただ悲劇の街を見ていました。

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今回は同行の取材チームのあるフィールドワークです。

移動にチャーターしたタクシーの運転手さんも、
家が大変な被害に遭われたとのこと。

「被災地を見てまわる」

そんな行為にどんな意味があるのだろうか?
当たり前のようにそんな自問を繰り返しながらの行程で、

しかし、
運転手さんは実に熱心に「ここを見てくれ」と車を走らせてくださり、
その過程でぽつりぽつりとご自身が受けた被災のことも語ってくれ、

そんな「ひとり」の経験に触れることで、
わずかではありますが想像力が動き始め、
ボクが目にする「未知の風景」は「被災の風景」に変わりました。

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そうやって「ひとり」を知ることでさらに動き出すのは
人や土地を愛しく思う気持ち。

運転手さんの朴訥とした人柄と土地に対する愛情に触れると、
悲劇のキワから広がる力強くも美しい田園風景に目を奪われます。

カッと射す真夏の太陽とカラッとした空気。
熊本ならではのノホホンとした雲たち。
阿蘇の峰から流れつく豊かで美しい水。

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この豊かな土地に住み、
土地を耕し、米を育ててきた人たち。

ボクたちは空と土とのわずかな隙間で生きていることが感じられます。
その尊さを益城という土地で感じます。

風景を丁寧に見て行くと、
田植えのされていない田んぼが少なからずあった2016年夏。

しかし、歩いて近づいて見た田植えの済んだ田んぼでは、
たくさんのカエルやタニシが住んでいた生きていました。

そのことをタクシーの運転手さんに伝えると、
ちょっと誇らしげに
「あー、そうでしたか、いましたか」
「なかなか大変なことなんですがね」(もちろん熊本弁で)と、
数時間のお付合いの中で、唯一笑って話してくれました。

この土地に暮らすことの意味と誇り。
そんなことに想像を働かせながら、
子どものころに駆けた田舎の風景の記憶をたどってみたりもしました。
その多くが、今や失われてしまってるんだけどね、、

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そんな想像の先、
益城の田んぼの風景の中で出会うコスモスの花や名もなき雑草、
その美しさ、たくましさ。

悲劇は今も進行中だ。
しかし、
その隣で美しさも豊かさも猛烈に息づいている。

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ボクは結局「被災」にはカメラのシャッターを切ることなく帰ってきました。

そういったことは、
そういったことをきちんと伝える資質のある人に任せなければと、
自分の無力だけ持ち帰ってきたって感じです。

カッとした太陽の光の下で輝くコスモスの花に出会えたことがすべてのような時間。
「なにをのんきな」と言われてしまうはずですが、
でも、もし余裕ある方は足を運ばれ、実際に見て感じて、
出来たら身近な人との会話に変えていってくれたらなあと願います。

益城町の被災現場は、
罹災証明の発行の遅れが少なからずあったりで、手のつけられていない倒壊家屋が残り、
そういった家は重機でなければ解決しないという現実もあり、
この日は日曜日ではありましたが、
復興ボランティアで町に入っている人の姿を目にしませんでした。

ということは、
この先で人の力が必要とされる時が必ず来ます。

益城に限らず、その土地や人の必要を精査し、
やれることがあればやればいいし、

そうでなくても、
放っておいたら失われてしまいかねない
美しさや豊かさを確認するだけでも、
ボクたちの未来は今よりちょっと美しく豊かになるんじゃないかと、
願いをこめてそう思います。

1人ひとりが持ち帰った実感を、
その是非を問うでは無く、オープンな会話の中でシェアし、
1人ひとりが確認が出来る現場。
望むべき未来の姿を想像しながら創ってゆきたいです。

あらためて、
ボクは東京にあって今は、
益城町に苗を植え、
美しくもたくましいコスモスの花を咲かせた
だれかのことを想像することから始めています。

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今回の熊本の一番の目的は、
熊本市内2か所で開催した子どもたちとの絵のワークショップ。
そして、大切な友人に会ってくること。

そんなことを言葉にしておこうと思ったのですが、
後ろ向きのコスモスの花のことで精一杯になってしまいました。

話の続きは後ほど。

明日から東北へ。

熊本で感じたもの、
東北で感じるもの、

それがどうなるのか?

答えを先回りせず
ともかく駆けてみようと思います。

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