山陰の日なたを駈ける

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ちょっと日に焼けております。

4月17日の金曜日、
鳥取空港往きのANAに飛び乗り
鳥取2泊松江1泊の唄の旅。

その愛しさが目眩を覚えるほどのものなので、
どうやって言葉を組み立てたら良いものか
しばらく考えておりました。

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考えれば考えるほど言葉はウソっぽく響いてしまいますね。

そんな“恋の物語”のような旅の記憶です。

まずはボクの視線を振り返っておこうと思いました。

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鳥取は初夏の日差しに溢れていて、
一年でもわずかしか無い気持ちの良い陽気の中、
昨秋に続き街を歩くワークショップを行いました。

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美しさも

醜悪さも
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ただただ優しく並べられている鳥取の街。

未来に向けて若いハートがこの街をどんな色に塗ってゆくんでしょうか?
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実にコンパクトな造りの街である鳥取
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行政の思惑なんか軽く飛び越え、
“若い人たちの心意気で創り上げる身の丈に合った豊かさ”
そんなんを手に入れられる、
そんな未来が想像出来る、
そんな数少ない街であると思うのです。

57年前にこの街が消失したあくる日の午後は、
この街に生きる人たちの心と同じく穏やかで、
旅人であるボクたちを優しく迎え入れてくれました。

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ただそこにある午後が暮れてゆく様が美しくて
ボクらは鳥取のみなさんの家の軒先をお借りして、
そんな夜に寄り添うような唄を残しました。
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鳥取の夜が明けボクらは出雲を目指します。
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それはやはり山陰という土地では稀な
豊かな光に包まれた日曜日の午後の旅。

ラジオではユーミンが、
続いて山下達郎が、
古いポピュラーミュージックを選曲していました。

豊かな初夏の山の色、豊かな川の流れ、豊かな日本海の風、
雄大な大山のシルエット、中海や宍道湖の大きさと、
他愛も無い夢に溢れたポップソング。

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そんな甘味さの中にあって、
もし日本という国がこの土地から広がっていったとしても、
それは好ましい事実であるんだってことを思いました。

ボクらは山陰からやって来た。

そうであるのなら、
ボクらはもともととてもロマンチックであったんだろね。

鳥取からあまり他の車とすれ違う事の無い立派な道を飛ばして3時間、
出雲はやはり空気がしっとりと、そして凛としているのを感じました。
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出雲は松江なども含んで出雲地方であり、
島根でも西方に位置する石見とは文化が違うそうです。

柔らかな山の稜線、コンパクトに広がる平野、豊かな海や湖の恵み、
すぐそこに迫る日本海、ナニかを包み隠すような曇りがちな空。

弥生の時代の人々がここに求めたもの、
タップリのロマンと共に想像してみました。

ボクら廃線になったJR大社線旧大社駅に着きます。
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出雲の若いハートが結集して創る唄会の会場は、
大正13年に造られたもの。

この場所が日本にとってどれだけ大切な場所なのか、
クラクラしながら想像してみました。

そしてこの場所に見合うことを成さねば、
そんな気持ちの昂りが押さえきれず、
必要なものを買いに行くことを言い訳に、
わずかな時間を見つけ出雲大社まで歩いてみました。
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大社駅から北に2キロ弱。
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日本海はすぐ左手の方にあるんだ。

そして太陽は東から昇り出雲大社の上をグルッと巡って
西の山の向こうに沈むのだね。

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必要とするモノを買えるような店は一軒も見当たらず、
ただそこは出雲大社への道。

静けさこそ出雲なんだね。

高い松並木の参道に入ると、
あとはただ吸い込まれてゆく感じ。

そして大社。
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これは仮殿、
その奥の本殿は改修中。
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日本を造ったみなさん、こんばんわ。

ちょっと今夜は騒がせてしまいますが、
どうぞよろしくお願いします。

あまり感じた事の無い時の流れに包まれ
随分歩いてしまいました。

そしてこの夜の唄会も、
この土地ならでは静けさと共に、
しかし熱いものとして昇華したように思います。
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この夜の宿泊は松江。
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明けて水の街は曇りの空。
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午後から雨になりました。

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お昼に頂いた出雲蕎麦は、
そのつけダレが甘くて、
この土地の辛口の酒ととても良く合うモノでした。

鳥取も島根も辛口の酒を醸します。

あまり広くない平野に対し
すぐソコまで迫る山と海。

新潟の辛口がコシヒカリに代表されるゴハンと合わせて頂くものだとしたら、
山陰の辛口の酒は、
豊かな海産物やそれに山の幸と合わせた頂くものなのでしょう。

地の物、旨いです。

この土地を選んだアメリカ人小泉八雲
彼が獲得した日本の心は、
武家屋敷をそのまま使った住居の小さな庭に感じました。
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小さな宇宙を前に静かにひと呼吸。

それはすぐに
後から入って来たおばさんグループにかき消されてしまいましたが、
とても豊かな時でありました。

そこからちょっと歩けば、
ボクがもっとも出会いたかった城、松江城天守閣です。
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江戸幕府がこの土地を重要に思っていた事、
この城の質実剛健な顔つきから伝わってきます。

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コンパクトだけどダイナミックな、
剛健であるけど色気に満ちた街です、松江。

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その街作りは、
電柱1本まで町並みを考え建てられている行政が徹底している部分と、
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人ヒトリの思惑や欲が組み上げたモノとが混在していて、
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歩いているのが楽しかったです。

そんな中で、実にもったいない使い方をしている旧日本銀行の古い建物。
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中途半端な良心やアート嗜好が残念。
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この土地の力があり、
この街の歴史という財産があれば、
もっと楽しい使い道があるんじゃないかな?

鳥取のようにスベテを失ってしまった後再建された街とは違い、
古い物がシッカリ残されている街だけど、
同じく若い人のイマジネーションが街造りに注がれたら、
もっと輝く可能性ばかりだよね、松江。

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もしくは、
鳥取と松江での若い人同士の交流とか、
そんなのをもっと活発に行う事で、
東京から見ても羨ましい文化が生まれるんじゃないか?
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この辺のことはまた後ほど。

で、雨が降ってまいりました。
そろそろ帰らねばです。

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ボクらは松江を後に、宍道湖から中海の大根島を経由して米子空港へ向かいます。

ご案内のHさんのおっしゃる「雨こそこの土地の景色だ」
そんな言葉が染みる旅です。
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しかし、無駄に造られる道路が醜悪な景色を造っているのにも出会う旅です。

土地や人の力を信じられず、
お金という価値だけで街をデザインしてしまっているどこにでもある景色。
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『故郷創世』は島根が生んだ政治家の言葉でしたが、
あなたの足元で故郷は創世されたのでしょうか?

米子空港は激しい雨の中で、
しかし東京に帰るボクたちを
相変わらずの優しさでもって見送ってくれました。
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ボクらはまた東京で頑張って、
またこの土地に帰ってこれるようにしなきゃだな、
そう思いました。

山陰の優しくも清々しい日々、
ありがとうございました。
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PEACE!

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